バイクのエンジン塗装DIY完全ガイド 初心者の失敗防止術徹底解説

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バイクのエンジン塗装に興味があっても、耐熱塗料の選び方や耐熱スプレーの違い、エンジン塗装の下地処理、マフラーまわりの塗装、エンジン塗装DIYと業者依頼の費用差、剥がれや失敗が怖くて一歩踏み出せないことって多いと思います。

実際に、エンジン塗装スプレーを買ったけど下地処理をどうしたらいいか分からない、どのくらいの費用でエンジン塗装ができるのか、ブラック塗装にしたいけど耐ガソリン性や焼き付けの有無が不安、といった相談をよく受けます。あなたも「自分でエンジン塗装をやってみたいけど、失敗して剥がれたらイヤだな…」と感じているかもしれませんね。

この記事では、そういった不安を一つずつ解消しながら、バイクのエンジン塗装をDIYで安全に楽しむためのポイントをまとめていきます。エンジン塗装に必要な工具や耐熱塗料、耐熱スプレーの選び方、サンドブラストやペーパーを使った下地処理、シリコンオフでの脱脂手順、缶スプレーを使った自家塗装の流れ、マフラーとの違い、さらに費用相場や業者に依頼した場合との比較まで、ひと通り押さえられる内容にしているので、読み終わるころには「これなら自分でもやれそうだな」と思ってもらえるはずです。

エンジン塗装は、ポイントさえ押さえれば難しいカスタムではありません。落ち着いて準備をしていけば、あなたの愛車の印象をガラッと変えられますよ。

この記事でわかること
  • バイクのエンジン塗装に必要な道具と耐熱塗料の基本が分かる
  • 下地処理や脱脂、缶スプレーを使ったDIYエンジン塗装の具体的な手順が分かる
  • 業者依頼との費用・仕上がり・手間の違いがイメージできる
  • エンジン塗装を長持ちさせるコツと注意点、安全面のポイントを押さえられる

    バイクのエンジン塗装の基礎

    まずは、バイクのエンジン塗装にチャレンジするうえで知っておきたい「基礎」から整理していきます。ここを押さえておくと、道具選びや作業の段取りで迷うことが減って、余計な失敗もグッと減らせますよ。この章では、耐熱塗料や耐熱スプレーの選び方、下地処理とサンドブラストの考え方、シリコンオフを使った脱脂のコツ、缶スプレーで自家塗装するときの一連の流れ、マフラー塗装との違いまで、エンジン塗装の「全体像」をざっくりつかんでいきます。

    耐熱塗料と耐熱スプレー選び

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    バイクのエンジン塗装を成功させるうえで、いちばん最初の重要ポイントが「どの耐熱塗料・耐熱スプレーを選ぶか」です。ここを適当に済ませてしまうと、どれだけ丁寧に下地処理をしても、エンジンの熱で塗装が焼けて変色したり、ひび割れたり、最悪パリパリと剥がれてしまいます。

    まず確認したいのが、耐熱温度のスペックです。空冷エンジンのシリンダーヘッド付近だと走行条件によっては150〜200度以上に達することがあり、マフラーやエキパイはさらに高温になります。なので、エンジン塗装用としては「最低でも200度以上、できれば300度〜600度クラスの耐熱塗料」を選ぶのが安心です。

    市販されている耐熱スプレーには、200度クラスのものから600度対応のものまでいろいろあります。例えば、ソフト99が出している耐熱ペイントは、エンジン周りやマフラーなど高温部品に使えるシリコン樹脂系の耐熱塗料で、硬化後の耐熱温度は600度とされています(出典:ソフト99『耐熱ペイント』商品情報ページ)。こういったメーカーのスペックを参考にしつつ、あなたのバイクの使い方に合う温度域を選んでいきましょう。

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    次に、仕上がりの質感です。エンジン塗装でよく選ばれるのは、半ツヤブラック・ツヤ消しブラック・シルバーあたり。ツヤ消しや半ツヤは多少のムラや下地の粗さをうまく隠してくれるので、DIY初チャレンジなら「半ツヤブラック」あたりがかなり鉄板です。逆に、ツヤありのブラックやメタリック系は、光の加減でムラが目立ちやすいので、慣れないうちはちょっとハードルが上がります。

    もう一つの要チェックポイントが、常温硬化タイプか、焼き付けが必要なタイプかという点です。耐熱塗料の中には、「塗っただけでは完全に硬化せず、一定温度で加熱することで本来の耐熱性能が出る」という商品もあります。エンジンを組んだ状態で塗装するなら、できるだけ常温硬化タイプ、または「エンジン始動による自然な熱入れ」でOKなタイプを選んだ方が扱いやすいです。

    耐熱塗料・スプレー選びのチェックリスト

    • 耐熱温度:200〜600度のどのレンジか
    • 用途:エンジン本体向けか、マフラー・エキパイ向けか
    • 仕上がり:ツヤ消し・半ツヤ・ツヤありのどれか
    • 硬化条件:常温で硬化するか、焼き付け温度と時間の指定があるか
    • 容量:エンジン全体を塗るなら300mlを1〜2本用意するのが目安

    ホームセンターに並んでいる耐熱スプレーでも、上のポイントだけ意識して見ていくと「どれでもいい」から「この中ならこれが自分に合いそうだな」という目線に変わります。ここ、最初のつまずきポイントなので、じっくり選んでいきましょう。

    下地処理とサンドブラストの要点

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    バイクのエンジン塗装は、「どんな塗料を使うか」以上に「どれだけ下地処理を頑張るか」で仕上がりと耐久性が決まります。ここをサボると、どんな高級な耐熱塗料を使っても、数ヶ月でパリパリ剥がれてきたり、塗膜の下からサビが浮いてきたりしてしまいます。

    基本の下地処理の流れはこんな感じです。

    ステップ1:汚れ・油分・サビを落とす

    まずはエンジンの外側についている泥・ホコリ・オイル汚れをざっと落としていきます。中性洗剤を薄めた水とブラシでこすり洗いしてもいいですし、パーツクリーナーで油分を落としてからウエスで拭き取る方法でもOKです。サビが出ている部分は、ワイヤーブラシやサンドペーパーでしっかり削り、浮いている塗膜や腐食部分をできるだけ取り除いておきましょう。

    ステップ2:ペーパーがけで「足付け」する

    次に、紙やすりで全体をまんべんなく磨いていきます。最初は#180〜#240程度の少し粗めの番手で古い塗装のツヤを消しつつ、凸凹を落としていき、そのあと#400〜#600くらいの中目〜細目で表面を均します。このときの目的は「塗料が食いつきやすい適度なザラザラ感を作ること」です。ツルツルした面に塗ると塗膜が乗り切れないので、少しマットな感じになるまでペーパーがけを続けてください。

    フィンの間やボルト周りなど、工具が入りにくい細かい部分は、紙やすりを細く折りたたんだり、割り箸に巻き付けて使うと作業しやすいですよ。時間はかかりますが、この「地味なひと手間」が仕上がりの差になります。

    サンドブラストを使う場合の考え方

    サンドブラスト(ブラスト機)は、砂やメディアを高圧で吹き付けて旧塗膜やサビを一気に落とす設備です。プロショップではエンジン塗装前にブラスト処理をすることが多く、素地を均一に出せるので非常に理想的な下地になります。ただし、DIYで導入するには設備コストや防塵・防音環境が必要になり、ハードルはかなり高めです。

    もし、ガレージに小型ブラストキャビネットを置ける環境があるなら、エンジンを降ろして単体でブラストしてしまうのも一つの手です。ただ、多くの人にとっては「エンジンを車体に載せたまま、手作業でコツコツやる」方が現実的かなと思います。

    大事なのは、サンドブラストの有無よりも「浮いた塗膜とサビをできるだけ残さない」ことです。そこさえ徹底できれば、手作業でも十分実用レベルの仕上がりになります。

    最後に、ペーパーがけ後の粉塵をきれいなウエスやエアブローでしっかり飛ばして、次の「脱脂」に進みましょう。

    シリコンオフで脱脂する手順

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    下地処理の次に待っているのが「脱脂」です。ここも、見た目以上にめちゃくちゃ大事な工程です。表面に油分やワックス成分が残っていると、塗装中に塗料が弾かれたり、乾いたあとにペリッと剥がれてしまいます。

    脱脂に使う代表的なケミカルが、シリコンオフ(シリコンリムーバー)です。

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    スプレータイプのものをエンジン表面に吹き付けて、キレイなウエスで拭き取るだけなので作業自体はシンプルですが、ちょっとしたコツを意識するだけで仕上がりが変わってきます。

    脱脂作業のポイント

    • 作業前に、手をよく洗ってから使い捨て手袋を装着する
    • シリコンオフは「ケチらずたっぷり」使って、油分を浮かせるイメージで吹き付ける
    • ウエスはキレイな面を使い続ける。真っ黒になったらすぐ交換する
    • ペーパーがけの粉塵は、脱脂前にあらかじめ吹き飛ばしておく

    特に、シリコンスプレーやタイヤワックスなどを使ったことがあるバイクは、その成分がエンジンやフレームに付着していることがあります。こういったシリコン系の成分は塗料にとって天敵で、どれだけ塗っても「魚の目」みたいに塗料が逃げてしまうことがあるので、しつこいくらい脱脂を繰り返す必要があります。

    シリコンオフやパーツクリーナーは可燃性で、有機溶剤を多く含みます。必ず屋外か、十分に換気された場所で使用し、火気は厳禁です。マスクと保護メガネを着用して、目や喉の刺激にも気をつけてください。

    脱脂が終わったら、いよいよマスキングです。フレーム・タンク・ラジエーター・タイヤ・ブレーキディスク・チェーンなど、塗料が飛ぶと困る部分を一気に養生していきます。新聞紙とマスキングテープでも十分ですが、作業スペースに余裕があれば、マスカー(テープ付きビニールシート)を使うと広い範囲を素早く覆えて便利ですよ。

    この「脱脂とマスキング」を丁寧にやっておくと、塗装のストレスがかなり減ります。ここまで来たら、ようやく楽しいスプレー作業の準備完了です。

    缶スプレーDIY自家塗装の流れ

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    ここからは、いよいよ缶スプレーを使ったバイクエンジン塗装の実際の流れを詳しく見ていきます。全体の段取りが頭に入っていると、途中で「あれ、次どうするんだっけ…」となりにくいので、一度ざっと読みながらイメージしてみてください。

    1. スプレー缶の準備と試し吹き

    まずはスプレー缶をよく振ります。目安としては、1〜2分くらいしっかりシェイクするイメージです。缶の中には沈殿している顔料があるので、ここをサボると色ムラやツヤムラにつながります。また、気温が低い日は、ぬるま湯(40度前後)で缶を軽く温めておくと、霧が細かくなって仕上がりが良くなります。

    次に、ダンボールや新聞紙に向かって試し吹きをして、噴射状態をチェックします。ここで「ツーッと液状で出ていないか」「霧が粗すぎないか」「ノズルが詰まっていないか」を確認しておきましょう。

    2. 捨て吹きで「足付け」層を作る

    いきなり本番の厚塗りをするのではなく、最初はごく薄く「捨て吹き」をします。エンジン表面から15〜25cmほど離して、スプレーを左右に動かしながらサッと一往復。色がうっすら付く程度でOKです。これを1〜2回繰り返すことで、下地に軽くザラつきができて、次の層が乗りやすくなります。

    捨て吹きと捨て吹きの間は、5〜10分ほど乾燥させます。完全に乾く必要はありませんが、表面がベタつかないくらいまでは待つのが安心です。

    3. 本塗りを数回に分けて重ねる

    本塗りも、「薄く・均一に・数回に分けて」が合言葉です。一度のストロークで厚く色を乗せようとすると、すぐタレてしまいます。1回目の本塗りでは、まだ下地が少し透けるくらいでもOK。全体の色が均一に乗り始めるのは、だいたい2〜3回目くらいからです。

    スプレーを動かすスピードは、自分の感覚でちょうど良さを見つけていくしかありませんが、最初は「ちょっと早いかな?」くらいのスピードで吹き始めて、様子を見ながら調整するのがおすすめです。エンジンのフィンの奥や、影になっている部分は角度を変えながら、何度かに分けて狙っていきましょう。

    タレてしまった部分を、乾く前にティッシュや刷毛でいじると、だいたい余計に悲惨になります。もしタレたら、いったん完全乾燥させてから耐水ペーパー(#800〜#1000程度)で均し、再度薄く塗り重ねてリカバリーする方が結果的にキレイに仕上がります。

    4. 乾燥と熱入れ

    塗り終わったら、説明書に書かれている「指触乾燥時間」と「完全硬化までの目安時間」をしっかり守りましょう。指触乾燥とは、指で軽く触っても塗料が付かない程度の状態のことで、ここに達したからといって内部まで硬化しているわけではありません。

    DIYの場合は、最低でも24時間、できれば2〜3日は放置しておくと安心です。その後、常温硬化タイプなら通常走行に移行していき、焼き付けが必要なタイプなら、アイドリング〜短時間の低負荷走行を数回に分けて行い、少しずつエンジンに熱を入れていきます。

    ここまでくると、もうゴールは目の前。あとはマスキングを慎重にはがし、外していた部品を戻して完成です。

    マフラーとエンジン塗装の違い

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    エンジン塗装を考えるとき、セットで気になりやすいのが「マフラー塗装」ですよね。見た目を統一したくて、エンジンもマフラーも同じ耐熱ブラックで揃えたくなる気持ち、すごく分かります。ただ、ここは一度立ち止まって、エンジンとマフラーの違いを整理しておきましょう。

    まず、温度域が違います。エンジン本体は高温とはいえ、場所によっては100〜150度程度に収まる部分も多いですが、エキパイやマフラーは排気ガスが通るため一気に温度が上がり、状況によっては数百度に達します。このため、エンジン用の200〜300度クラスの耐熱塗料だと、マフラーにはスペック不足になるケースが多いです。

    マフラーを本気で塗装するなら、600度クラスの高耐熱スプレーを選ぶのが基本です。商品説明で「マフラー用」「排気系パーツ用」と明記されているものを選ぶと失敗が少なくなります。

    次に、受けるダメージの種類も違います。エンジンは主に熱とオイルミストが敵ですが、マフラーはそれに加え、飛び石・泥ハネ・路面からの水や塩分など、あらゆるダメージを受けます。特にフロントタイヤの直後にあるエキパイ部分は、砂利や泥水をモロに食らうポジションなので、塗膜のダメージはかなり大きいです。

    さらに、素材も異なる場合があります。エンジンはアルミ鋳物やマグネシウム合金などが中心ですが、マフラーはスチールやステンレスが多く、素材によって塗料の食いつきやすさも変わってきます。そのため、プライマー(下塗り)を併用した方がいいケースや、サビ止め塗料を先に入れた方がいいケースもあります。

    「エンジンはDIY、マフラーはショップでセラコートやパウダーコート」といった組み合わせもアリです。見た目の統一感を重視するなら、そのあたりも一つの選択肢として考えてみてください。

    まとめると、「エンジン塗装で使った耐熱塗料をそのままマフラーにも流用する」のは少しリスクがあります。マフラーはマフラー用の高耐熱塗料で別プラン、と分けて考えた方が結果的に長持ちしやすいですよ。

    バイクのエンジン塗装と費用

    ここからは、バイクのエンジン塗装にかかるお金と時間、そしてDIYと業者依頼の違いについて、もう少しリアルな数字も交えながら見ていきます。「とりあえずDIYでやってみるか」「ここはプロに任せよう」と判断するときの材料にしてもらえたらうれしいです。

    バイクエンジン塗装の費用相場

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    まずは、多くの人が気になっているであろう「バイクエンジン塗装の費用感」からいきましょう。結論から言うと、DIYと業者依頼では、金額の桁がまるっと一つ変わると思っておいてOKです。

    DIYエンジン塗装の費用イメージ

    DIYでエンジン塗装をする場合、かかる費用は基本的に「材料代+簡単な工具代」だけです。すでに工具(ソケットやレンチなど)を持っているなら、純粋に塗装系の道具だけを揃えればOKなので、トータルコストはかなり抑えられます。

    項目 おおよその目安
    耐熱スプレー(300ml) 1本800〜2,000円程度
    シリコンオフ・脱脂剤 1本800〜1,500円程度
    紙やすり・ワイヤーブラシ 合計数百円〜1,000円程度
    マスキングテープ・養生材 合計数百円〜1,000円程度
    使い捨て手袋・マスクなど 合計数百円〜1,000円程度

    エンジン全体を黒一色で塗るケースなら、耐熱スプレーは300ml缶を1〜2本用意しておけば足りることが多いです。全部新品で揃えたとしても、トータル数千円〜1万円台前半に落ち着くイメージですね。

    業者に依頼した場合の目安

    一方で、エンジン塗装をショップや専門業者に依頼するときは、工賃+塗料代+設備コストなどが上乗せされる形になります。塗装範囲(ヘッドだけ・エンジン一式・マフラーも含むか)や、エンジンを降ろすかどうかで金額は大きく変わりますが、少なく見積もっても数万円、内容によっては10万円オーバーも珍しくありません。

    ここで挙げている金額は、あくまで一般的なイメージです。実際の費用はバイクの車種や状態、ショップのメニューによって大きく変わるので、正確な金額は必ず各ショップや公式サイトで確認してください。

    「とにかく出費を抑えたい」「多少のムラは味だと思える」という場合はDIY、「とことん仕上がりにこだわりたい」「エンジンを開けるついでに総リフレッシュしたい」という場合は業者依頼、といった感じで考えていくと選びやすいかなと思います。

    業者依頼とDIY自家塗装比較

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    ここでは、もう少し細かく「DIY」と「業者依頼」を比較していきます。どちらが正解という話ではなく、あくまであなたの優先順位に合わせて選ぶための材料として読んでみてください。

    仕上がりのクオリティ

    プロの塗装業者は、塗装ブースや焼付け設備、専用のコンプレッサーやスプレーガンを使います。下地処理もサンドブラストや専用のサンダーでガッツリ行うため、塗膜の均一さ・光沢・耐久性はかなりハイレベルです。キャンディカラーやメタリック、パウダーコートなど特殊な仕上げにも対応してくれる場合も多いですね。

    一方、DIYはどうしても缶スプレーが基本になるので、塗料の粒子や吐出量に限界があります。距離や角度を間違えるとムラも出やすいですし、近くでじっくり見ると「よく見るとDIYだな」という雰囲気は残りやすいです。ただ、遠目から見たときの印象をガラッと変えるという意味では、DIYでも十分に満足できるレベルまで持っていけます。

    費用と時間のバランス

    費用については前の章で触れた通りですが、ここに「時間」という軸を加えて考えると、また見え方が変わってきます。DIYは材料費こそ安いものの、下地処理からマスキング、塗装、乾燥、組み立てまでをすべて自分でやる必要があり、トータルで丸一日〜数日をエンジン塗装に使うことになります。

    業者依頼の場合、作業そのものの時間はプロに任せられますが、バイクを預けている期間はその車両に乗れません。通勤で使っている場合は代わりの足を用意する必要がありますし、「シーズン中はあまり預けたくない」という人も多いはずです。

    個人的には、「作業そのものを楽しみたいならDIY、結果だけしっかり欲しいなら業者依頼」という分け方がしっくりくるかなと思っています。

    自由度と自己満足度

    DIYの最大のメリットの一つが、色や仕上がりの自由度です。純正っぽいブラックでシンプルに仕上げるのもいいですし、ガンメタやシルバーでメカニカルに見せるのもアリ。気に入らなければ後から塗り直すこともできます。

    業者依頼でもカラーバリエーションはあるものの、メニュー化されている色から選ぶ形になることが多く、そこまで突飛な色は選びにくい場合もあります。その代わり、「あとはプロに任せておけばOK」という安心感は大きいですね。

    バイク全体のメンテナンスや慣らし運転の考え方については、バイクの慣らし運転の距離・速度・回転数の目安も参考になると思います。エンジン塗装後の熱入れのイメージにもつながるので、気になる方はチェックしてみてください。

    剥がれや失敗を防ぐ下地処理

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    このセクションでは、エンジン塗装における「よくある失敗」と、そのほとんどを未然に防ぐための下地処理のポイントを整理していきます。私の経験上、エンジン塗装のトラブルの8〜9割は、実は塗料ではなく「下地処理と脱脂」に原因があります。

    ありがちな失敗パターン

    • 塗装後数週間〜数ヶ月で、塗膜がパリパリ剥がれてくる
    • 一部だけ塗料が弾かれて、シワシワに縮んでしまう
    • 厚塗りしすぎてダラダラ垂れて、そのまま固まる
    • いつまで経っても表面がベタつき、ホコリを拾ってしまう

    このうち、特にイヤなのが「剥がれ」と「弾き」ですよね。せっかく時間をかけて塗ったのに、短期間で塗膜が浮いてくるとテンションだだ下がりです…。こういった失敗を避けるためのキーワードが、「古い塗膜をできるだけ除去する」「表面をペーパーで荒らしておく」「徹底脱脂」の3つです。

    剥がれを防ぐ下地処理のコツ

    まず、古い塗装が浮いている部分や、サビが進行している部分は、ワイヤーブラシ・スクレーパー・サンドペーパーなどでできるだけ削り落とします。完全に素地が出るまでやるのがベストですが、そこまで難しい場合でも「浮いている部分は残さない」ことだけは徹底してください。

    次に、ペーパーがけです。#240前後で旧塗膜のツヤを落とし、#400〜#600あたりで全体の表面を整えていきます。このとき、「もういいか…」と思ってから、さらに一周ペーパーをかけるくらいの気持ちで頑張ると、後々の剥がれにくさが全然違います。

    そのうえで、シリコンオフを使ってしっかり脱脂。特に、ガスケット付近やオイル交換口、ブリーザーホース周辺など、オイルミストが飛びやすいエリアは入念に脱脂しておきましょう。

    ポイントは、「削る → 掃除 → 脱脂」までがワンセットで、ここまで終わってはじめて「塗装してOK」の状態になる、という感覚を持つことです。

    もしそれでも一部に弾きや縮れが出てしまった場合は、その部分の塗膜を一度落とし、ペーパーがけと脱脂をやり直してから再度薄く塗り重ねていきましょう。焦らず一歩戻る勇気が、最終的な仕上がりを良くしてくれます。

    耐ガソリン塗料と焼付塗装のコツ

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    エンジンまわりの塗装で見落としがちなのが、「ガソリン」や「オイル」が塗膜に与える影響です。エンジン塗装=耐熱性のイメージが強いですが、実際には耐熱性と同じくらい、耐油性・耐ガソリン性も大事なんですよね。

    ガソリンとオイルに強い塗料を選ぶ

    キャブ車の場合、キャブレターやホースからのにじみで、エンジン側面にガソリンが垂れることがあります。インジェクション車でも、タンク脱着やホース交換のときにガソリンがこぼれる可能性はゼロではありません。そういうとき、耐ガソリン性の弱い塗料だと、一瞬で塗膜がふやけたり、白く濁ったりしてしまいます。

    クランクケースカバーやタペットカバーなど、ガソリンがかかる可能性がある部分を塗る場合は、「耐ガソリン性あり」と明記されている塗料や、耐熱ウレタン系の塗料を選ぶとより安心です。とはいえ、どんな塗料でもガソリンを長時間放置するとダメージは避けられないので、付着したらすぐに水拭きしてあげる習慣をつけておきましょう。

    焼付タイプ耐熱塗料の扱い方

    焼付が必要な耐熱塗料の場合、塗装後の「熱入れ」が重要な工程になります。DIYの場合、オーブンで焼くわけにはいかないので、多くの人は「エンジンを実際に回して焼き付ける」というスタイルになります。

    • 塗装後、十分な時間常温乾燥させる(最低24時間〜推奨)
    • エンジンを始動し、アイドリング〜低回転でしばらく様子を見る
    • 短時間の近所走行を何度かに分けて行い、少しずつ回転数と時間を伸ばしていく
    • いきなり高速道路や長時間の高回転走行は避ける

    焼付工程は、走行中の安全にも関わるので無理は禁物です。とくに整備経験に不安がある場合や、エンジン本体に手を入れた直後などは、事前に信頼できるショップや整備士に相談したうえで計画を立ててください。

    また、焼付中は塗料から煙やにおいが出ることがあります。説明書に記載されている範囲であれば異常ではありませんが、異様なにおいがしたり、塗膜が変色してきた場合は一旦走行を中止し、状況を確認しましょう。

    ガソリンとオイルの扱い、そして焼付の進め方さえしっかり押さえておけば、DIYでもかなり長持ちするエンジン塗装が可能になります。

    バイクのエンジン塗装DIYまとめ

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    ここまで、バイクのエンジン塗装についてかなり細かいところまでお話してきました。最後に、ざっくりとおさらいしておきましょう。

    • バイクのエンジン塗装では、耐熱温度・仕上がり・硬化条件をチェックして耐熱塗料や耐熱スプレーを選ぶ
    • 下地処理と脱脂が仕上がりと耐久性のカギ。古い塗膜やサビを落とし、ペーパーがけとシリコンオフで徹底的に準備する
    • 缶スプレー塗装は「薄く・均一に・複数回」が基本。タレたら無理に触らず、乾燥後にペーパーで整える
    • エンジン本体とマフラーでは温度域もダメージも違うので、塗料選びは分けて考える
    • DIYはコストと自由度に優れ、業者依頼は仕上がりと耐久性に優れる。それぞれの良さを理解して使い分ける
    • ガソリンやオイルがかかりやすい部分には、耐ガソリン性のある塗料を選び、付着したらすぐに拭き取る

    バイクのエンジン塗装は、少し手間はかかりますが、そのぶん完成したときのうれしさも大きいカスタムです。黒く締まったエンジンを見るたびに、「自分でここまで仕上げたんだな」とニヤッとしてしまうと思いますよ。

    ただし、ここで紹介した内容や費用感はあくまで一般的な目安です。実際の作業条件や塗料の性能は商品ごとに違うので、正確な情報は必ず公式サイトや商品説明書、ショップの案内などで確認し、不安な点があれば遠慮なくプロの整備士やペインターに相談してください。

    この記事が、あなたのバイクのエンジン塗装DIYの背中をそっと押すきっかけになればうれしいです。安全第一で、楽しくカスタムしていきましょう。

    最後までお読みいただきありがとうございます。